丞相病篤かりき
わが家の老犬ロビーは16才、もう2年2カ月も悪性腫瘍で抗がん 剤治療を続けており、その薬害で眼は見えず、耳は聞こえず、足は 衰え、やっとこの夏を越した。
犬種はワイヤーフォックステリア、体重10kgの精悍な犬であっ たが、もういけない。
この2週間、ほとんど寝ている、立てないので食事は妻が手で丸め て口に入れてやる、排泄は紙おむつで受ける。
医者はもうこの状態で生かしておく意味は無いという。しかし排泄 の後おむつ交換を要求して我らを呼んで吠えるのを聞くと、まだ生 きたい意志を感じざるをえない。
ロビーの病篤し、命旦夕に迫る。
~~~丞相病篤かりき~~~
O兄の西安・敦煌旅行記、漢詩、<病篤し>ときて、<丞相病篤か りき>のリフレインが口に付いて離れなくなった。
星落秋風五丈原 土井晩翠
祁山悲秋の風更けて
陣雲暗し五丈原、
零露の文は繁くして
草枯れ馬は肥ゆれども
蜀軍の旗光無く
鼓角の音も今しづか。
丞相病あつかりき。
清渭の流れ水やせて
むせぶ非情の秋の聲、
夜は関山の風泣いて
暗に迷ふかかりがねは
令風霜の威もすごく
守る諸営の垣の外。
丞相病あつかりき。
帳中眠かすかにて
短檠光薄ければ
ここにも見ゆる秋の色、
銀甲堅くよろへども
見よや侍衛の面かげに
無限の愁溢るるを。
丞相病あつかりき。
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何時の頃覚えたものか、あとは忘れた。 全篇300行を超える長詩である。
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老夫婦でやっと老犬1頭を支えている 黒潮丸
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