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2017.05.31

ヒルベリー・エレジー

∞∞∞2017/5/9∞∞∞∞∞∞∞
~~~ヒルビリー・エレジー~~~
「ヒルビリー・エレジー」(J.D.ヴァンス 光文社)を読んだ。
 
トランプ大統領がラストベルトの票を固めて当選して以来そこに住む白人労働者層=ヒルビリーに注目が集まり、この書もマスメデイアに多く取り上げられたので書評などお目に留められた方も多いであろう。
 
「ヒルビリー」とは田舎者の蔑称で、ここでは特にアイルランドのアルスター地方から米アパラチア山脈周辺に住み着いた「スコットアイリッシュ」のことを言っている。
著者ヴァンスの故郷ミドルタウンは、AKスチールの本拠地として知られるオハイオ州南部の地方都市である。かつて有力鉄鋼メーカーだったアームコが川崎製鉄と資本提携して急場を凌いだのがAKスチールだが、ほかの製造業と同様に衰退してしまった。
失業、貧困、離婚、家庭内暴力、ドラッグが蔓延するミドルタウンの高校は州内でも最低の教育レベルで2割は卒業できない。地域に大学に進む者は居ない。
10代での妊娠、低い進学率、アルコールや薬物に対する依存症、家庭内暴力、非正規雇用や失業による高い貧困率、生活保護への依存体質など、ヒルビリーと呼ばれる人々の生活は困窮をきわめる。
こうした社会で暮らす著者も幼少期はやはり典型的なヒルビリーとして過ごす。シングルマザーの実母は育児能力を欠き、次々とボーイフレンドを変え、薬物依存症に陥る。
「貧困は家族の伝統だ。祖先は南部の奴隷経済時代には日雇い労働者で、次世代は小作人、その後は炭鉱夫、機械工、工場労働者になった。アメリカ人は我々のことを、ヒルビリー、レッドネック(陽に焼けているから)、ホワイトトラッシュ(白いゴミ)と呼ぶ。でも私にとって、彼らは隣人であり、友だちであり、家族である」
 
トランプが「ラストベルト」の人心を浚ってブームを引き起こして以来ラストベルトは米国の産業の衰退を象徴する言葉のようになっているが、ヒルビリーは必ずしも産業の衰退によって発生した階層ではない。もっと昔から続く人々の生活や信仰や文化に基づく階層である。粗野で無責任で向上心が無く勤勉でもない、褒められた文化ではない。
そのような文化で生きている人々があることを音楽用語の「ヒルビリー」を通して知ってはいたが、私はそれが19―20世紀前半のものと思っていた。
しかしこの書によって現在に生きていることを知った。
ヒルビリーが我らと同世代人とは!
 
ヒルビリーが黒人やヒスパニック、アジアンに対して差別感を持たないはずはないが、この書では注意深くそこを避けている。
 
アメリカでもイェールのロースクールに学ぶことは特別なことであるらしい。殆ど社会の最底辺からイェールに進んだ著者の文化ギャップの叙述も面白い。
 
~~~ウイスコンシン~~~
この書によってウイスコンシン州もラストベルト地帯であることを知った。
 
実は妻の従兄弟が若くして米国に渡り、親の援助もなしに苦学してウイスコンシン大学の教授となった。
私は何も知らずもっとスノッブな大学と思っていたが、ラストベルトでは彼も随分苦労したのだろうと今更に思う。
 
   
 
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T高校からH大学も文化ギャップではあったが、イェールには遠く及ばぬ。
 

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