« 「庭園に死す」「天皇の公務」 | Main | 結婚記念日 »

2016.10.17

村上春樹を読めない理由

∞∞∞2016/10/15∞∞∞∞∞∞∞
~~~村上春樹を読めない理由~~~
私がどうしても村上春樹を最後まで読み通せない理由を自分でも判らないでいたのだが、やっとその理由を教えてくれる評論に出会った。
たまたまネットで出会った、<村上春樹のノーベル賞落選が「既定の事実」だったホントの理由>という評論である。
 
筆者は黒古一夫という文芸評論家で、これまで見たことも聞いたことも無い人だった。
調べたら1945年生れの日本近代文学研究者、文芸評論家、筑波大学名誉教授で、そんな偉い人の名前も知らない私が悪い。
 
彼の文章を抜粋してご紹介する。
―前略― つまり、高度に発達した資本主義社会(都会)に生きる人間の「喪失感」や「疎外感」、「孤独感」、「絶望感」を描くことに成功し、若者を中心に世界中に多くの読者を獲得した村上春樹であるが、ではそのような「喪失感」や「孤独感」などを内に抱いて生きる若者たちに対して、村上春樹の文学はどんな「生きる指針・ビジョン」を示してきたのか、ただその文学世界に存在するのは現状を「消極的」に追認するだけのものだったのではないか、ということである。

1994年にノーベル文学書を受賞した大江健三郎は、そのような村上春樹の文学的傾向について「村上春樹の文学の特質は、社会に対して、あるいは個人生活のもっとも身近な環境に対してすらも、いっさい能動的な姿勢をとらぬという覚悟からなりたっています。その上で、風俗的な環境からの影響は抵抗せず受身で受けいれ、それもバック・グラウンド・ミュージックを聴きとるようにしてそうしながら、自分の内的な夢想の世界を破綻なくつむぎだす」(傍点原文「戦後文学から今日の窮境まで」

村上春樹自身も、このような現在もなお有効な大江評価と同じようなことを、河合隼雄との対談『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(96年刊)の中で語っていた。村上春樹は、1995年に起こった阪神淡路大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件を契機に、大江が言う「(社会に対して)能動的な姿勢をとらぬという覚悟」と同じ意味の「デタッチメント(社会的無関心)」であった文学傾向を転換させ、今後は「コミットメント(社会との関わり)」を主題にした作品を書く、と宣言していたのである。しかし、試みは壮大だったが結果は「失敗作」となった『1Q84』(1~3 09~10年)や、これもまた多くの批評家に「失敗作」と断じられた『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』や連作集『女のいない男たち』を見ると、60代になって村上春樹はまた初期の「デタッチメント」的作品に本卦還りしてしまっていて、「転換」は実現しておらず、その「迷走」ぶりこそノーベル文学賞から遠ざけられた原因になっているのではないか、と思わざるを得ない。

また、「エルサレム賞」の受賞式でパレスチナ(弱者)とイスラエル(強者)との争いが絶えないイスラエルに出掛けて行き、「壁=システム・権力(強者)」と「卵=個人(弱者)」との関係において、一人の作家として自分は「卵(弱者)」、つまりパレスチナの側に付くと言いながら、その後パレスチナとイスラエルの紛争(戦争)に関してどんな発言もせず行動もしない在り方や、東日本大震災(福島第一原発の爆発事故)直後の「カタルーニャ国際賞」の受賞スピーチの中で、それまでの反核運動を否定するような「我々日本人は核に対する『ノー』を叫び続けるべきだった」と断じながら、その後のフクシマの事態や原発再稼働問題について沈黙を守り続けてきたその「核」に対する姿勢も、村上春樹の「言行不一致」としてノーベル文学賞(候補)作家に相応しくないと判断されたのではないか、と思わざるを得ない。

更には、拡大する「貧富の格差」など様々な問題を抱える「日本」の作家でありながら、その作品世界が「日本の現実」に根差していないのではないかという問題もある。日本初のノーベル文学賞授賞者になった川端康成の文学が、あくまでも遅れて近代化した日本の自然と芸術(文化)との関係を考えざるを得なかった日本人の苦悩と哀しみを主題にしていたことを思い起こすと、村上春樹文学の「無国籍性」(世界文学の性格を持つ、とも言えるが)こそ欠点=弱点なのではないか、思わざるを得ない。
村上春樹のノーベル賞待望論に沸くネット上で、何故彼がノーベル賞に値するかを論じた文章を見たことが無い。
あるのは<何か国語に翻訳された><世界で累計何万部売れた><賭け屋で何番>ばかりである。
私は読んでないから論じようがないが。
 

~~~ヴィールス性胃炎~~~
夜中に猛烈な下痢をした。その後止まらない。
先日寝冷え?で行った医者に診せたら「ヴィールス性胃炎だろう」という。
まったくあてにならないと思うが、そのまま放っておけないのが高齢者の弱みである。
若い頃ならそんな診断は馬鹿にして放っておけば納まったものだが
 
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
医者に弱みを見せた  森下一義

« 「庭園に死す」「天皇の公務」 | Main | 結婚記念日 »

Comments

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21255/64361699

Listed below are links to weblogs that reference 村上春樹を読めない理由:

« 「庭園に死す」「天皇の公務」 | Main | 結婚記念日 »