「長生きが地球を滅ぼす」を読んだ
「長生きが地球を滅ぼす」(本川達雄 文芸社文庫 2012・8)を読んだ。
表題から社会科学的な論述かと思ったら、さにあらず生物科学的な論考であった。
例えば各動物の寿命を調べる。
ネズミの心臓1拍(心周期)は0.1秒、ヒトは1秒、ゾウは3秒だそうだ。そしてどれも15億回打って寿命を終える。
また動物の寿命は体重に比例するそうだ。
このあたり、酸素消費量とか標準代謝率とかアロメトリー式とか、いろいろ云われるが私には判らない。
対数を使ってきれいな表を見せられるがこれもよく判らない。
同じ体重の変温動物と恒温動物ではエネルギー消費が15倍違うそうである。恒温動物はそのエネルギーで筋肉を作り、早い動作を得て、餌の獲得が容易になり、種族が増えた。
現代の人間は同じ体重の恒温動物の44倍のエネルギーを使っているそうだ。そのエネルギーで恒温環境を作り、安楽な生活を獲得し寿命を延ばしている。戦前の農家の主婦が自分の自由になる時間は15分だった。現在は4時間である。この時間をエネルギーであがなっている。
著者によれば医術もエネルギー投入の結果だそうだ。
人間の寿命は、縄文時代30年、江戸時代45年、昭和20年代後半60年、現代80年である。
縄文時代からの50年の伸びはエネルギーの投入による。そのエネルギーは石油など天然資源を使う限り後代からの前借であり、多大な環境破壊を伴っている。
人間は前借で寿命を延ばして何をしようとしているのか。
著者はこの問いに答えるため、俄か勉強でニーチェ、カント、フッサールを読む。さらには道元「正法眼蔵」の時間論にまで踏み込む。
ニュートンの物理的時間とは別に生物的時間があるのではないかという。
延びた寿命をどうするのかについて、納得できる結論ではない。
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