« 車の燃費-少額訴訟制度 | Main | 春のオープンガーデン巡りバス »

2012.03.04

「自死の日本史」を読んだ

「自死の日本史」(モーリス・パンゲ 竹内信夫訳 講談社学術文庫)を読んだ。

この書は東京日仏学院院長であったモーリス・パンゲが1986年に出した、自死(意思的な死)をフェーズにとった日本精神文化史である。

安徳天皇を抱いて海に身を投げた二位尼。
鎌倉幕府滅亡時の武士の集団切腹-6千人余という(太平記)。
秀吉に疎まれて自死した千利休。
浅野内匠頭、大石内蔵助と四十七士。
西郷南州隆盛の死と士族の終焉。
乃木希典の殉死。
2.26事件。
芥川龍之介。太宰治。川端康成の自死。
カミカゼ特攻隊の若者の心情。
昭和軍閥領袖の死に方。
市ヶ谷自衛隊の三島由紀夫。

多くの自死を挙げながら日本の文化を語る。
自死・自殺は決して日本だけのものではない。著者の広い学識は古今東西の歴史にも目を配る。

日本の自死を特徴づけるものは「切腹」の様式化であるとする。
為すべきこと何も無く、何も生産しない侍(サムライ)が階級として存続し得たのは、常に切腹の覚悟に裏打ちされていたからだという。
この儀式化された様式は敗戦時の阿南陸相、昭和の三島にも踏襲される。

パンゲは哲学者であるが、これだけ歴史を論ずれば社会科学者でもあらざるを得ない。
自殺の統計、西鶴や近松の演劇、明治維新政府の天皇制教育など多岐に踏み込む。
しかし或る行動を、或る集団を、或る思想を糾弾することはしない。
底に、日本文化に対する深い愛情が溢れている。

これを読んでいま私が思うのは、何も為さず、何も生産しない年金生活者はいかに生き、いかに死ぬべきかということである。

 

« 車の燃費-少額訴訟制度 | Main | 春のオープンガーデン巡りバス »

Comments

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21255/54137305

Listed below are links to weblogs that reference 「自死の日本史」を読んだ:

« 車の燃費-少額訴訟制度 | Main | 春のオープンガーデン巡りバス »