測量野帳
このブログの読者で<佐々木中>のファンも多いと思う。
”彗星のように出現し、透徹した論理と華麗な文体で思想・文学界を驚倒せしめた孤高の怪傑、佐々木中。”
これは「足ふみ留めて」の帯に書かれた惹句である。
佐々木中。1973年青森生れ。作家。哲学者。東大卒。文学博士。法政大学非常勤講師。
著書
「夜戦と永遠―フーコー・ラカン・ルジャンドル」(以文社 2008年)
「切り取れ、あの祈る手を」(河出書房新社 2010年)
「九夏前夜」(河出書房新社 2011年)
「足ふみ留めて」(河出書房新社 2011年)
「この日々を歌い交わす」(河出書房新社 2011年)
いま都会の大型書店では彼の著書が平積みになって思想・文学に関わる若い人の熱い視線を集めているという。
ここは都会ではないし大型書店もなく若くもないが何故か私のアンテナに引っ掛かり、「切り取れ・・・」以下の全冊を読んだ。いや”読んだ”とはとても云えない、”全ページに風を入れた”とだけ云っておこう。
私には彼の著作を殆ど読解出来ない。そもそも主著である「夜戦と・・・」(600ページ)に手を出さないのは”風を入れる”ことすら出来ないだろうと判っているからである。
判らないが、読んでいて娯しい。彼の言葉は全編が詩である。詩集を繙くが如く風を入れている。
この写真は<測量野帳>である。土木現場で測量のデータを記入するノートである。
坂口恭平(ゼロ円ハウスを実践している建築家)がある時佐々木の部屋に押しかけたら、この測量野帳が50冊も並んでいたという。佐々木はこの測量野帳に読書メモを記入しているという。
私はフィールドノートの検討で<測量野帳>を入手していた。なんだか嬉しくなった。私はいまそれほどに佐々木中フリークである。
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大島兄、五十嵐姉
先に私は<そのうちに橋本治あたりが”M・H=村上春樹を読まなくてよい理由”を書いてくれないものか>と書きました。
しかし橋本治を待つ必要はありませんでした。
既に2009年9月に佐々木中は「生への侮蔑、《死の物語》の反復」(「足ふみ留めて」に所収)なる一文で、<この小説(IQ84)は文学的に間違っている>と断じていたのでした。
ご一読あれ。
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