« 孫歌は作るな | Main | 長井健司氏とラッパ »

2007.09.29

本歌どり-やまもも

毎日リハビリ病院で待つ間、「名歌で読む日本の歴史」(松崎哲久 文春新書)を読んでいる。
松崎哲久は1950年生れ。東大、ハーバード院卒。縁戚・姻戚のつながりで自民党総裁秘書などを経て、新進党・民主党の代議士となり現在落選中。埼玉10区。
「名歌で読む・・・」は素晴らしい本だ。歌に関するいろんなエピソードを幅広く拾っているが、政治家だけに権力争いにまつわる記述や視線が深く鋭い。
現役の政治家で、この若さで、この精進と博識は感服するばかりだ。

~~~~~~
出でて去(い)なば主(ぬし)なき宿となりぬども軒端(のきば)の梅よ春を忘るな   源実朝

実朝は修善寺に幽閉された兄頼家の後を継いで3代将軍となった(12才 1203)。
27才の時右大臣に昇任し、鶴岡八幡宮で祝賀の式が催される。この歌はその朝、家を出るときに歌ったものとされる。
そして退出の際、公暁に刺殺される。公暁は頼家の遺児で、実朝を倒せば自分が将軍になれると唆されていた。

この歌は「新古今和歌集」にある式子内親王の次の歌を本歌としている。
詠(なが)めつる今日はむかしになりぬとも軒ばの梅よ春を忘るな

さらに菅原道真の<東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ>を踏んでいる。
大宰府に流される前の菅原道真は右大臣であった。実朝はそれをも意識していたであろう、と松崎は書く。

世界のそれぞれの文化において、それぞれに比喩・隠喩・暗喩・押韻・・・を駆使しての歴史記述や文学表現があるのだろうが、わが国の<歌枕>や<本歌どり>の技法・伝統はやはり世界に冠たるものではないかと私は思うのである。

~~~~~~
これだけの著述を書く松崎哲久とはどんな人間かとネットで猟ったが、政治的経歴も本人のHPも大したことなかった。
私の<尊敬する人物>リストに入れない。

~~~~~~
庭のやまももの実りてリスに食わるるを口惜しとて、主ハシゴに上がりて採りけるに、
落ちて肩の骨を折りて詠める

主(ぬし)落ちてリスの天下となりぬども軒のやまもも春を忘るな   黒潮丸

« 孫歌は作るな | Main | 長井健司氏とラッパ »

Comments

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21255/16606982

Listed below are links to weblogs that reference 本歌どり-やまもも:

« 孫歌は作るな | Main | 長井健司氏とラッパ »