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2006.04.20

御前崎の船虫Kさんの話

その人の名は川田さん(仮名)としよう。
小田原の人である。昭和23年生れの58才。ステンレス板金の職人である。
妻を亡くし、子供たちは独立し、4年前に余生はヨットで送ろうと店をたたんだ。
そして中古のJ24を買った。大昔デインギーに乗ったことはあった。
(写真の右、背の低い方が川田さん。左は下田のKさん62才。)
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さてそれをどこに置くか。係留料が高くては困る。
御前崎にマリーナが出来ることを聞きつけ、ここなら安いだろう、絶対に潜り込もうと御前崎漁港の一角にJ24を不法係留し、近くにアパートを借りて移り住んだ。
目出度くマリーナ完成と同時に契約した。年間16万円であった。
そして一昨年の夏、25年物のJ24で九州までの航海にシングルハンドで出かけた。

J24とは軽量のレーサーである。エンジンは船外機。その25年物。よくぞ九州まで行った!というような艇である。しかもシングルハンドで!
殆ど居住性はない。つまり煮炊きの設備や収納がない。
いうなれば錆の出た自転車で野宿して九州一周するようなものである。
3回落水したという。
よくぞ戻ってきた。

去年はやはり23年物の中古ヤマハ30Cで沖縄に行った。
地元農協を定年退職した人がヤマハ30を買い、一緒に行こうと言ったそうだ。
その人は駿河湾を出たことがない。
航海中の揉め事はその人が海況を知らず、ヤマハ30Cを余程の大ボートと思い込んで荒天に平気で乗り出すことだったという。
まあ戻ってきた。

マリーナ内にやはり20年以上の日産GS800が係留されていた。パワーボートである。いい艇である。
しかしいかにも古い。手入れをしてない。
ある時、沈んでしまった。
川田さんが一生懸命手伝って浮かすだけは浮かしたがエンジンなどもう救いようがない。
オーナーは「よかったら乗って管理していてくれ」と言ったという。
川田さんはアパートを引き払ってGS800に移り住んだ。
だが動かない艇でも係留料はかかる。年間20万円。オーナーは廃船を決意した。
問題があった。昨今ボートの廃棄には金がかかる。廃船処理費として40万円ほどかかるのである。
川田さんが「タダで呉れないか」と言ったらオーナーは渡りに船と承知した。

さてどこに置くか。
川田さんにMさんという友達がいる。御前崎の市会議員で、焼津の八丁艪競争で知合ったそうだ。クラッシクな漁船を漕ぐなかなか粋なレースである。
Mさんに相談したら「俺の工場の敷地に置け。地代なんぞ要らん。」と言う。
これも渡りに船と運び込んだ。今年の2月の話である。
この写真がその姿である。
内部に入ったが、ヒドイ!もうすぐ蛆がわく。ボートのせいではない、川田さんの不衛生、無頓着による。
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Mさんは電線を引いてくれ、水道も使わせてくれる。料金は一切とらない。まったく天国である。よき友を持った!
しかるにである。Mさんは川田さんをこき使うのだそうだ。
何を直せ。これを運べ。畑を手伝え。あまつさえ、茶を摘め。
<茶を摘め>には笑ってしまった。このあたりは茶どころである。
「こんなに働かされるんじゃ、その時給で20万円の係留料が払えるなあ。」と川田さんはこぼす。

J24での航海で艇の小ささを痛感した川田さんは、清水折戸にヤマハ26の26年物が出ていることを知る。「持っていってくれたらタダでいい」という。
これも前述の廃船処理費が絡んでいる。今時古い艇のオーナーはタダで持っていってもらう方が有難いのである。
ヤマハ26はなかなか良い艇だが、26年はきつい。それにこれは船外機艇である。ガソリンの船外機とデイーゼルの船内機とでは信頼性がまったく違うのである。
しかし川田さんはめげずにこれをもらって、御前崎に回航した。
海外の艇は30年―70年と乗るのが常識だが、日本のプロダクションボートにそれだけの寿命はない。住宅の場合と同じである。

乗ってきたがやはり船外機ではリキがない。新しい船外機を買うと30万も50万もする。
悩んでいるところにまた情報が入った。
「油壺にヤマハ26の船内機艇がある。26年物だがエンジンは動く。5万円でいい。ただしマストも艤装も何も無い。」
川田さんはこれを御前崎に運んだ。
船外機艇のマスト、艤装を船内機艇に付け替える予定である。
そして今夏、北海道に出掛ける予定である。
これとて1000CCで18年物の中古自動車で走るようなものである。
車検は駄目でも船検は通るのだ。
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かくして川田さんは一時4隻のボートのオーナーとなったのであった。
本来ならマリーナがそれを許さないのだが、川田さんの何でも雑用を引き受ける人の良さと、ヒマなマリーナ事情がそれを許している。
彼の人徳なのか、ボート達にも嫁入り口が決まりそうだという。
J24はどこかの庭のオブジェとして貰われていく。
マストを抜いた船内機艇は、老人クラブの集会所から声がかかっているそうだ。

御前崎の船虫・川田さんとの一夜の付き合いであった。

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