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2006.02.20

わたしが一番きれいだったとき

詩人・茨木のり子が死んだ。

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わたしが一番きれいだったとき 街々はがらがら崩れていって とんでもないところから 青空が見えたりした

わたしが一番きれいだったとき まわりの人達が沢山死んだ 工場で 海で 名もない島で わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

わたしが一番きれいだったとき だれもやさしい贈物を捧げてはくれなかった 男たちは挙手の礼しか知らなくて きれいな眼差しだけを残して皆発っていった

わたしが一番きれいだったとき わたしの頭はからっぽで わたしの心はかたくなで 手足ばかりが栗色に光った

わたしが一番きれいだったとき わたしの国は戦争で負けた そんな馬鹿なことってあるものか ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた

わたしが一番きれいだったとき ラジオからはジャズが溢れた 禁煙を破ったときのようにくらくらしながら わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

わたしが一番きれいだったとき わたしはとてもふしあわせ わたしはとてもとんちんかん わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた できれば長生きすることに 年とってから凄く美しい絵を描いた フランスのルオー爺さんのように ね
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享年80才。

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