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2005.02.23

身慎莫(みじんまく)

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身慎莫(みじんまく)。
今朝寝床の中で久世光彦の「蕭々館日録」を拾い読みしたいたらこんな言葉に行き逢った。
生まれて初めて見る言葉だ。
おのれの姿にタラリ汗を流した昨日の今日だけに、なんだか身に沁みた。

~~~~~~
「一時と違って、いい女がめっきり少なくなった。」
 父さま(小島政二郎)が大きく頷く。あたしの手前、めったに口は出さないが、女の話にいちばん敏感なのは、九鬼さん(芥川龍之介)でも蒲池さん(菊池寛)でもなく、うちの父さまである。
「気性もそうだが、高い着物を着ていても、姿がもう一つ野暮なのが気にくわない。あれはどういうことなのかな、蕭々先生。スッと近付いてくるときに、スッキリしない。何かキリッとしない。以前は町場にだっていたものだが、顔は拙くても、台詞や所作が垢抜けてて、テキパキ気味がよくて、そのくせ女らしい含羞(はじらい)もあって━つまり、何て言ったらいいのか、ホラ━━」
さっきからウズウズしていた父さまが、嬉しそうに身を乗り出す。
「身慎莫かな?」
「そうそう、身慎莫、身慎莫」
「何でしょう、そのミジンマクってのは」
 手を挙げて質問したのは雪平さんだったが、不審そうな顔は、並川さんも中馬さんも、実はあたしもおなじだった。流石に迷々さんだけはニヤニヤしている。
「つまり、何ていうのかな」
父さまは一応勿体ぶる。
「言語学的に言えば、<身仕舞い>と<身支度>が混淆したんだろうな。身の回りが引き締まっているとか、様子に隙がないとか━━ま、そんなところだろう。」
父さまは鹿爪らしい様子はしてみせるが、<得意>と顔に書いてある。
「そうそう、『浮世風呂』に≪身慎莫をよくすれば、じじむさくもなく━━≫とあるから、女には限らないようですが」
迷々さんが、いかにも迷々さんらしく付け加える。
「九鬼がこのごろ、銀座界隈に顔を出さないのもわかるな」
~~~~~~

思えば身慎莫な粋筋の女性と言葉を交わさなくなって久しい。

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